デイケアの実績を数値化する時代へ

デイケアの実績を数値化する時代へ

いま、デイケア施設や就労支援施設は需要が増し、そのあり方について改めて考える時期がきていると私は考えています。今後は、患者の状況といった施設の実績を数値化することが大切であり、利用者はその実績を見ながら治療施設を選択できるようにすることが望まれると考えています。

減る入院患者、増える外来患者

精神病院の入院患者の減少と国の精神病床削減方針の具体化により、入院病棟のダウンサイジングと自然淘汰は一層進行していくと考えられています。一方で気分障害の増加に伴い、精神科外来を受診する患者は確実に増え続けています。それに伴い、デイケアや就労支援移行事業所などの福祉事業の必要性は上がっています。

数値化された実績を見て利用者が選択

リワークに特化し復職支援を行っているデイケア、発達障害に特化したデイケアなど、さまざまな取り組みも行われてきています。今後は精神科外来・デイケア施設では、患者の状況を数値化して、医師とコメデイカル(薬剤師・看護師・作業療法士等)が共同で病状を把握し薬剤減量など治療の最適化を図り、デイケア全体の実績も数値化することが大切であると考えています。その実績を見ながら利用者が治療施設を選択できるようにするのが望まれます。

依頼を受け、医学専門誌に寄稿

今回、入院病棟を閉鎖することは大変難しいと考えられていたなかでこれを実地し、精神障害者福祉ホームと精神科デイケアを開設した経験から、「精神科デイケアの今後のあり方」と題して医学専門誌に寄稿。デイケアと就労支援施設などの福祉事業との違いについて、今後の精神科外来治療に求められる要因に関して考察しました。

うつと不安をセルフチェックするアプリ「アン-サポ」について講演

うつと不安をセルフチェックするアプリ「アン-サポ」について講演

「アン-サポ」(※1)、うつ病治療をサポートする無料のウェブサービス。目に見えない、分かりにくいうつ病を定量化することで可視化し、ご自身の治療経過の正確性を高めることを目指して構想、開発したアプリです。おかげさまでユーザーさまからも好評をいただいています。アン-サポはiOS版はiTunes App Sroreから、android版はPlayストアからダウンロードできます。ぜひご利用ください。

※1 Yoshinori Watanabe, Yoko Hirano, Yuko Asami, Maki Okada & Kazuya Fujita (2017): A unique database for gathering data from a mobile app and medical prescription software: a useful data source to collect and analyse patient-reported outcomes of depression and anxiety symptoms, International Journal of Psychiatry in Clinical Practice, DOI: 10.1080/13651501.2017.1315139

シンプルな操作性と充実の機能

アン-サポの主な機能は、セルフチェック、お薬手帳、日々の記録(グラフ)の3つです。アン-サポを開発するうえで重視したのは、シンプルな使いやすさと充実した機能。アン-サポは長期間使うことでより効果を発揮します。そのため、長期間使用してもらえるよう、煩わしさをできるだけなくしたシンプルな操作性を追求。そのうえで充実した機能を備えました。

うつと不安の度合いを数値化して可視化

アン-サポの大きな特徴は、HSDS(ひもろぎ式うつ尺度)(※2)とHASA(ひもろぎ式不安尺度)(※3)を使用することで、うつ症状と不安症状を数値化。さらにその数値をグラフ化することで、現在の状況や治療効果などを可視化したことです。これにより、セルフチェックが容易となり、ユーザーの患者さまからも好評をいただいています。

※2 Mimura C,

うつ病とリウマチは相互に深く関係していることを改めて学ぶ

うつ病とリウマチは相互に深く関係していることを改めて学ぶ

リウマチの患者さまはその痛みにより、多くがうつ症状を抱えており、重症になると、大うつ病性障害と診断される方もいます。今回、講演をお願いした東京女子医科大学の山中寿先生は、リウマチの患者さまのうつ症状を改善したら、リウマチ自体も良くなるだろうとお話しされました。リウマチの痛みが原因で気分が落ち込む、やる気がでないなど、うつ症状の合併を疑われる方は、ぜひ一度ご相談ください。

リウマチとうつ病、ストレス障害には深い関係がある

リウマチの合併症としてうつ状態になる患者さまは多く、リウマチが重症になるほど大うつ病性障害と診断される方も増えます。軽いうつ症状なら、リウマチを治療するだけでよくなるそうですが、大うつ病性障害と診断されてしまった患者さまには、リウマチの治療と並行して、精神科での治療が必要となります。また、スウェーデンの行われた大規模な研究では、ストレスに関連した精神疾患(外傷後ストレス障害[PTSD]、急性ストレス反応、適応障害、およびその他のストレス障害)と診断された人は、後に自己免疫疾患と診断されるリスクが高いことが報告されています。

Song H, et al. JAMA. 2018;319:2388-2400.

うつ症状の合併を疑われる方は相談を

ただ、患者さまのなかには、主治医にうつ症状を訴えることのできない方もいると聞きます。というのも、疾患そのものを見るリウマチ科の先生に、専門外のうつの症状を訴えにくいと考えてしまうそうなのです。だからこそ、身体科と精神科が手を組み、患者さまを診ることが重要であると私は考えています。

自己免疫疾患の代表的な病気、リウマチを学ぶ

今回リウマチについて学んだのは、2018年12月6日、市ヶ谷ひもろぎクリニック隣のオトナリASUKARAビルにて、私が座長を務め、東京女子医科大学医学部リウマチ内科学講座教授・講座主任の山中寿先生を演者に迎えた講演会です。演題は「自己免疫疾患の治療戦略の変化~精神疾患(ストレス)と自己免疫疾患の関係~」。精神とは関係がないと思われていた身体科の患者さまも、実は精神科と深く関係していることを再確認できた講演会でした。

シューイチでパニック障害の説明をする

パニック障害についてテレビで詳しく説明させていただきました

土曜日の朝、「パニック障害」についてテレビの取材がありました。内容は①パニック障害の症状、②パニック障害の原因、③パニック障害になりやすい人、などについてお話しする機会をいただきました。ご存知のように最近、ニュースで飛び交っている話題のようで、正しく病識を持っていただく良い機会と捉え、なるべくわかりやすく説明させていただきました。

放送では薬物療法についてはふれていませんでした。こちらについて、以下のリンクをご参照ください。少しでも思い当たりましたら、受診されることをおすすめ致します。

パニック障害の症状は?

パニック障害を一概に語るのは難しいですが、下記のような症状が突然あらわれ、その発作の不安が予期不安として認識され、だんだんやれる事が少なくなると思っていただいて良いと思います。

  1. 動悸、心悸亢進、または心拍数の増加
  2. 発汗
  3. 身震いまたは震え
  4. 息切れ感または息苦しさ
  5. 窒息感
  6. 胸痛または胸部の不快感
  7. 嘔気まはた腹部の不快感
  8. めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、まはた気が遠くなる感じ
  9. 寒気または熱感
  10. 異常感覚(感覚麻痺またはうずき感)
  11. 現実感消失(現実でない感じ)または離人感(自分自身から離脱している)
  12. 抑制力を失うまたは”どうかなってしまう”ことに対する恐怖
  13. 死ぬことに対する恐怖

パニック障害の原因は?

ストレスを感じ体調不良が重なった時に、初めての発作が出やすいです。ストレスだけではなる可能性は少ないです。ストレスを回避する体力と余力があれば、起きないと考えています。やはりストレスと体調不良が重なり、それが続いていくと発作を起こしやすいと思います。

パニック障害になりやすい人は?

真面目に仕事をしてストレスをためている人が発症する可能性は高いと思います。仕事をずっと遅くまで行っていて、睡眠不足に陥り、それが続くとやはり発作を起こしやすいと思います。治療としてはまずは食生活をしっかりして、運動をしていなければしてみる、そして睡眠を十二分にとる、こういった規則正しい生活をすると予防にもなるし治療にもなると思います。

理事長・医師 渡部芳徳

うつと不安の度合いを数値で表し、症状評価を行っています

うつと不安の度合いを数値で表し、症状評価を行っています

うつ症状と不安症状の評価スケールでより正確な診断を可能に

先日参加した第28回日本臨床精神神経薬理学会・第48回日本神経精神薬理学会の合同年会で行われた公開ディスカッションでは、Zimmerman先生からさまざまな興味深いお話しを聞くことができました。そのひとつが、「アメリカの精神科医の約80%が症状評価をしていない」というものです。

驚いたことに、当日会場でも「患者の症状評価をしていますか?」という質問に対して、約200人いた聴講者のうち、手を上げたのは私を含めて2~3人しかいませんでした。

市ヶ谷ひもろぎクリニックでは、HSDS/HSASという、うつ症状と不安症状の評価スケールを使用し、症状評価をしています。それにより、より正確な診断と治療が可能となっているといえます。

世界的に認められた、オリジナルの評価スケールが好評

Zimmerman先生いわく、アメリカの精神科医の約80%は評価スケール等を使った症状評価は行わず、医師の臨床経験に基づく感覚や勘を頼りに治療を行っている。さらに、評価スケールを使っていないので、どのような経過をたどって症状が良くなった、悪くなったということをカルテに残していないというのです。

もちろん、医師の経験値や感覚、勘はとても重要です。しかし、それだけで正確な診断や治療が行えるのかは少々疑問です。驚いたことに、当日会場でも「一人ひとり患者さんの症状評価をしていますか?」という質問に対して、約200人いた聴講者のうち、手を上げたのは私を含めて2~3人しかいませんでした。

市ヶ谷ひもろぎクリニックでは、私が開発したHSDS/HSASという、うつ症状と不安症状の評価スケールを診察時に使用しています。これは、うつと不安の度合いが数値で表されるため、自分がどのように回復に向かっているのかがよくわかると、患者さまにも大変好評をいただいています。

HSDSとHSASの信頼性と妥当性については、2011年に欧米の学術雑誌に公開されるなど、世界的に認められています。ご自身の症状評価が気になる方、HSDS/HSASに興味のある方は、お問い合わせください。

(※1、※2はHSDSとHSASの出典)
※1 Chizu Mimura, Mariko Murashige, Toshihiko Oda, Yoshinori Watanabe. Development and Psychometric Evaluation of a Japanese Scale to Assess Depression Severity: Himorogi Selfrating Depression Scale. International Journal of Psychiatry in Clinical Practice.

めざましテレビにパニック障害に音声出演

パニック障害についてテレビで診断と治療法についてお話ししました

昨日診療終了後に、パニック障害の診断と治療法また症状などについて聞かせてほしいという事で、テレビの電話取材をお受けさせていただきました。慎重に治療して行くことが必要ですから、動悸や発作などでお困りの方は速やかにご相談ください。

パニック障害の診断と治療法!

パニック障害は、発作などの症状が出たら、その原因となる場面・要因などから遠ざけた生活を行う事が重要です。この生活に慣れた上で、それでも動悸や発作などが治らない場合にはパニック障害と診断した上で、薬物治療を行うのが通常です。また薬物治療は、その薬を飲んだからといって、すぐにおさまるものでもありません。3ヶ月ほど時間をかけて薬の効き目を見て行く必要があります。

どんな症状が出るのか?

以下から4つの症状が出た場合、それはパニック障害の可能性があります。思い当たる時は、ご相談ください。早期の治療が必要です。

  1. 動悸、心悸亢進、または心拍数の増加
  2. 発汗
  3. 身震いまたは震え
  4. 息切れ感または息苦しさ
  5. 窒息感
  6. 胸痛または胸部の不快感
  7. 嘔気まはた腹部の不快感
  8. めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、まはた気が遠くなる感じ
  9. 寒気または熱感
  10. 異常感覚(感覚麻痺またはうずき感)
  11. 現実感消失(現実でない感じ)または離人感(自分自身から離脱している)
  12. 抑制力を失うまたは”どうかなってしまう”ことに対する恐怖
  13. 死ぬことに対する恐怖

理事長・医師 渡部芳徳

うつ病治療の実態に迫る公開ディスカッションに参加

うつ病治療の実態に迫る公開ディスカッションに参加

治験データから読み取るうつ病の軽症化・慢性化

第28回日本臨床精神神経薬理学会・第48回日本神経精神薬理学会の合同年会で行われたシンポジウムにて行われました、うつ病治療の実態に迫る公開ディスカッションに参加しました。

私が提示した議題は「臨床試験から学んだプラセボレスポンス」。近年、治験によるプラセボ効果に変化が出ています。それは、実薬の効果には変化がないか、むしろ低下してきているのに、プラセボ効果が徐々に上昇しているということです。

これに対し私は、市ヶ谷ひもろぎクリニックで行っている治験データをもとにした見解を発表。プラセボ反応の上昇の原因は、臨床治験に軽症うつ病が多く組入られているからではないか。これは、軽症化で慢性化しつつあるうつ病患者が増加しているのではないかという問題を提起しました。

その問いに対してZimmerman先生がコメントをよせ、会場全外でディスカッションを行いました。日頃の臨床疑問の答えが見つかる、とても興味深いシンポジウムでした。

課題は、いかに患者にとって最高な治療を提供するか

「定説は本当に『定説』なのか?-うつ病治療の実態を問う」と題したシンポジウムは、杏林大学医学部の渡邊衝一郎先生が進行役となり、ブラウン大学ウォーレン・アルパート医学校のMark Zimmerman先生が、先生の豊富な研究と臨床経験から、当事者の観点も踏まえた検証と解説をされました。

後段は、東京医科大学の井上猛先生が「うつ、不安症の成因論を問う」、私が「臨床試験から学んだプラセボレスポンス」という話題をご提示し、その問いに対してZimmerman先生がコメントするという形で、公開ディスカッションが行われました。

うつ病とひと言でいっても、重症度・成因・環境など当事者一人として同じ背景はないために、呈する症状も極めて多様です。また、うつ病を治療していくと約3分の1がなかなか寛解しないともされています。このような混沌とした状況で、いかに患者にとって最高な治療を提供するかがいまの課題です。その解決の糸口にあふれた、有意義なシンポジウムでした。

Papakostas GI, Fava M. Does the probability of receiving placebo influence clinical trial outcome? A meta-regression of double-blind, randomized clinical trials in MDD. Eur Neuropsychopharmacol 2009; 19(1): 34-40.

学会主催のrTMS講習会を受講、実施資格を取得しています

学会主催のrTMS講習会を受講、実施資格を取得しています

rTMS(反復経頭蓋磁気刺激)実施者講習会へ参加

市ヶ谷ひもろぎクリニックでは、うつ病の治療法の一つとして、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)を導入しています。rTMSは磁気の刺激によって脳の活動を回復させる治療法で、海外ではすでに保険が適応されている、確立した治療法です。(詳しくは当ホームページの「精神科」→「磁気刺激療法(TMS)」をご覧ください)

日本におけるrTMの保険適用を前に、公益社団法人日本精神神経学会が主体となって策定したrTMS療法の適正使用指針を正しく理解するための講習会「rTMS実施者講習会」が開催されました。定員は150人でしたがすぐに満席に。参加者の7割は医師で、北海道から沖縄まで日本全国から参加されていたことからも、新しいうつ治療法に対する関心の高さを感じました。講習会では、rTMSの基礎、実践・実施過程、有効性・安全性、また適正使用指針についての講義が行われました。質疑応答では機器の適応・不適応などについて質問が多くあがっていました。

メーカー主催の実技講習会への参加も不可欠

講義参加修了者には後日受講修了証が発行され、企業が実施する実技講習会への参加資格を得ましたので、2018年11月に実技講習会へも参加してきました。

市ヶ谷ひもろぎクリニックでは、私のほか看護師1名がrTMS実施者講習会と実技講習の両者に参加。治療装置を適切に使用する資格を正式に取得していますので、 安心してrTMS治療にご参加いただけます。ご興味のある方は、まずは主治医にご相談ください。